オノマトペを用いて
印象を測る

要旨

オノマトペの印象を評価することで、本来は直接的には観測できない心理学的現象である「印象」を、いかにデータから定量的にとらえて測定し分析するかを学ぶことを本実験の目的とした。スクリーンに、プロジェクタを用いて刺激であるオノマトペを投影して実験を行った。被験者は、スクリーンに提示された刺激について、35種類の両極的な軸で測定を行った。分析方法は、プロファイルの作成・ユークリッド距離の算出・因子分析の3つの方法を用いて分析を行った。

目的

オノマトペの印象を評価することで、本来は直接的には観測できない心理学的現象である「印象」を、いかにデータから定量的にとらえて測定し分析するかを学ぶことを本実験の目的とした。オノマトペとは、擬態語・擬声語・擬音語の総称である。印象がどのような構造で形成されているかを、SD法を用いて測定する。 SD法(semantic differential method/technique)とは、「小さい-大きい」、「速い-遅い」などといったいくつかの両極的(dichotomous)な形容語の軸で評定を行うことで、その刺激の意味を実証的に測定する手法である。すべての形容語項目に対して、「どちらでもない」という反応を生み出す点を意味空間上のゼロ点とする。

方法

対象

10〜40代の男女42名

材料

装置としてはプロジェクタを用い、スクリーンに刺激である8種類のオノマトペを投影して実験を行った。用いたのは、CVNCVN(C=子音、V=母音、N=撥音)4モーラの、繰り返しのオノマトペで、母音を/a/・/i/・/u/・/o/、子音を/k/・/g/とするものであった。具体的に記述すると、「かんかん(kankan)」「きんきん(kinkin)」「くんくん(kunkun)」「こんこん(konkon)」「がんがん(gangan)」「ぎんぎん(gingin)」「ぐんぐん(gungun)」「ごんごん(gongon)」の8種類であった。この8種類の刺激について、SD法を用いてこれらのオノマトペの意味を実証的に測定した。測定は、これらの語が本来もつ意味を深く考えずに音の感じで行われたが、参考までに、本来の意味を以下に掲載する。

【かんかん】
① 金属性の物を打って出す音。鐘などが鳴る音。
② ランプや電燈が盛んに光り輝く様子。太陽が盛んに照っている様子。
③ 怒りで熱くなっている様子。激しく怒っている様子。
④ 炭火など勢いよくおこる様子。
⑤ 心の晴れ晴れとした様子。

【がんがん】
① 鐘などが激しくなる音。
② 怒鳴ったりして出す大声。
③ 耳や頭に強く響く様子。またその状態。
④ 激情などが音を立てているような様子。
⑤ 勢いよく立て続けにことを行う様子。盛んに。むやみに。
⑥ 火が盛んにおこる様子。

【きんきん】
① 妙に響く音。
② 固く張り詰めた様子。

【ぎんぎん】
① 虫などが煩い声を立てて鳴く様子。
② 頭が絶えずひどく痛み様子。
③ 音楽などによって気分が非常に高揚した。

【くんくん】
鼻でにおいをかいで出す音。

【ぐんぐん】
今までに比べて一段と。引き続き。一段と強い力などによって。

【こんこん】
① きつねの鳴き声。
② 固いものを軽く、など続けて打って出す音。
③ 空咳などの声
④ 雨や雪、あられ等の振る様子。

【ごんごん】
固い物が強く打ち当たって立てる音。鐘の音など余韻のある響き。

『擬声語擬態語慣用句辞典(1992)』・『日本国語大辞典第二版 第三・四・五巻(2001)』

刺激の意味を測定するのに用いた両極的な軸は35組であった。具体的に記述すると以下の通りである。

X01安全な危険な
X02醜い美しい
X03小さい大きい
X04軽い重い
X05健康的な不健康な
X06退屈なおもしろい
X07よいわるい
X08動的静的
X09暑い寒い
X10混沌とした秩序だった
X11現実の虚構の
X12女らしい男らしい
X13知的でない知的な
X14強い弱い
X15陽気なまじめな
X16新鮮なしなびた
X17あいまいなはっきりとした
X18近い遠い
X19角ばった丸まった
X20空っぽの満ちた
X21乾いた湿った
X22速い遅い
X23不安定な落ち着いた
X24澄んだ濁った
X25暗い明るい
X26悲しいうれしい
X27にぶいするどい
X28古い新しい
X29深い浅い
X30ありふれた特徴的な
X31興奮した穏やかな
X32リラックスした緊張した
X33硬い柔らかい
X34積極的な消極的な
X35粗い滑らかな

また、これら35種類の両極的な軸について、どちらの極に近いかを5段階で評定する記録用紙を使用した。

手続き

本実験は、愛知県津島市内の某セミナー会場にて、スクリーンに、プロジェクタを用いて刺激であるオノマトペを投影して実験を行った。被験者は、スクリーンに提示された刺激について、35種類の両極的な軸で測定を行った。刺激はそれぞれ、「提示します」と言ってからスクリーンに表示された。全てひらがなで提示され、被験者は意味を深く考えずに音の感じで測定した。提示時間は5分とされていたが、全ての被験者の測定が終わり次第終了した。
次に、分析方法の手順についてであるが、本実験の結果は、
・プロファイルの作成
・ユークリッド距離の算出
・因子分析
の3つの方法を用いて分析を行った。
プロファイルは、多次元のデータを視覚的に表現するためのものである。35種類の、形容詞の両極的な軸それぞれについて、被験者全員のデータの平均をとったものを用いた。
ユークリッド距離とは、d = ( x – x ) + ( x – x ) + ・・・ + ( x –x )(但し本実験の場合、(オノマトペの種類)(形容詞の種類)と表される)の式で表されるものであり、対象同士(本実験の場合オノマトペ同士)がどのくらい似ているかを表すものである。dの値が0に近ければ近いほど、そのオノマトペ同士は似ているということになる。
因子分析は、既に分析されたものを用いた。尚、提出者が採用したのは4因子解の場合のデータである。

結果
お問い合わせはこちら