刺激検出事態から
人の認知過程を考える

考察

Table 1と Table 5において、信号刺激を含む場合はS3という判断がS2やS1よりもずっと多いのに対して、信号刺激を含まない試行の場合は、N1と判断することが最も多く、その後N3、N2と続く。信号刺激を含む場合は、刺激が提示される僅か250msの間に1つでも信号刺激をはっきりと見つけることができればその地点でS3、すなわち「確かに信号がある」と判断され、はっきりとではなくてもあるように見えればS2、すなわち「おそらく信号がある」などと、個人の判断基準に従って判断されたと考えられる。しかし、信号刺激を含まない場合は、N3、すなわち「確かにノイズだけである」と判断するのは難しい。なぜなら、刺激の1つ1つが信号刺激でないと確認できたときにはじめて「確かにノイズだけである」と判断できるからである。そして、僅か250msの時間では全ての刺激を判断することは不可能である。であるにも関わらず、N1に続いてN3という判断が多く、N2と判断されることが少ないのは、予め25%或いは75%と信号刺激の含まれる可能性についての知識が被験者に与えられていたからであろう。では、信号刺激を含まない場合において、N2が格段に少ないのはなぜだろうか。それは、N2すなわち「おそらくノイズだけである」という定義がはっきりしないからである。特にN1、すなわち「当て推量だがノイズだけである」との区別がはっきりしない。
信号刺激の含まれる確率が25%であるTable 3と 75%であるTable 7とを比較すると、Missの数はあまり変わらないのに、False AlarmはTable 3の方が格段に多いことが分かる。またTable 4と Table 8を比較しても、後から行った第2実験の結果であるTable 8においては9割を越える正確さで判断されているのに対し、Table 4より、第1実験ではそれ程正確に判断されなかったことが分かる。これは、主に実験の初期段階において、信号刺激「×」がどのようなものであるか認識できていなかったことが1つの大きな理由として考えられる。事実、25%における第1ブロック終了直後、信号刺激「×」が意外に大きかったことに対して驚きの声を発する被験者があった。対して第2実験では、最初の第1ブロックから被験者が信号を認識できており、それを探すという明確な意識を持って実験に臨むことができた。個人の内観としても、第1実験の初めの方においては、信号刺激が「×」であることは知っていても、大きさなど具体的にどのようなものであるかが分からず、ノイズ刺激「・」も、信号刺激「×」が小さくてよく見えなかっただけではないかなどと考えてS1と判断することもあった。第1実験の途中で1度「×」を認識できてからは、信号がどのようなものか分かったので、ある程度正確に判断できるようになった。個人のデータであるTable 10と Table 12を比較しても、第1実験と第2実験の正確さの違いは明らかである。このことから、視覚というものは慣れに左右されやすいということが分かった。

感想

今回の実験はプロジェクタを用いて大人数で同時に行ったという点を考慮しなくてはならないと思う。席配置や視力の問題による見づらさがあった可能性は否めない。もちろん事前に見づらくないか等の確認は行ったが、実験が始まってから気づくこともある。また、周辺に座る人のちょっとした反応に自身の判断が影響を受けたり、他の人の用紙が見えてしまった可能性もある。こういったことを完全に排除するには、個室やパーテーションで間仕切りされた場所で、1人でモニターを見て行うような形態である必要があるだろう。
個人の結果を見るとMissについては例外なくN1、すなわち「当て推量だがノイズだけである」を選んでおり、False AlarmについてもS1、すなわち「当て推量だが信号がある」を選んでいることが多い。自信がないときには曖昧な選択肢を選びがちであるという自分の性質がよく表れているように思われ、大変興味深い。ただ質問紙方等でも、3段階であれば2、5段階であれば2、3、4といった曖昧な選択肢が一般的に選ばれやすい。個人の性質というより、人間の本質的な部分であるのかもしれない。

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